移民集住地で仕事をする事と利他

2022年は、保見団地の地域計画業務(地域に住む方々や団体の声にならない欲望や脳みその端にある感覚の芽を拾い上げ、自発的で豊かな地域づくりの指針をつくる業務)が始まりました。様々な団体や地域の人と関わる中で、仕事のスタンスをしっかり考えなければと思いました。そんな中で、ミシマ社から出版された中島岳志さんの著書「思いがけず利他」が参考になりました。利他という言葉自体は、聞いたことはあるけれど何かはよくわかっていなかったのですが、ミシマ社の本が好きなので買ってみたところ、大正解でした。

利他という言葉は、他人に対して利益を図ることを意味するようです。この本は、本当の意味での利他とは何なんだろうかと考えさせてくれます。
一般的な利他の概念から想像すると、利他とはボランティアやプレゼントなどが思い起こされると思います。著者はそれらを完全に否定するわけではありませんが、安易な利他の矛盾や複雑性を指摘しています。例えば、ボランティアはどうしてもうさん臭さがぬぐい切れないことが多々あり、自分がいい評判を獲るためにやっているんじゃない?結局それは利己的なことがあるのでは?と指摘されています。例えば、プレゼントや寄付は、関係性によってはもらう人に負い目や負債感が発生し、上下関係のようなものが発生してしまうのではという事を指摘されています。(文章力の問題で、著者がかなり斜に構えているひとかのような説明になってしまいましたが、実際はもっとマイルドでロジカルに語られています)
だとしたら、本当の意味での「利他」とは何なのかということを、落語等を引用しながら教えてくれます。本書は本当の意味での「利他」は、巡り巡って思いがけずに誰かに届くものであり、わかりやすく認識できるものではないのではないのではと指摘しています。自分のやりたいこと(=利己的)だったり他人の為を思ってではない行動が、巡り巡って、偶然誰かのためになる瞬間が訪れる。与える人と与えられる人という構造が直接的ではなく、ふとした瞬間に、又は時間が経った後に、与える側ではなく、受け取る側の裁量によって利他はうまれるのではないかと言っています。

保見団地の仕事に話は戻ります。保見団地は、高校の頃住んでいた寮の近くにあり、私にとってはソーセージを買いに行ったり友達と遊んだりする面白い場所でした。一方で、保見団地は日本を代表する移民集住地として知られています。保見団地で仕事をしていると言うと、移民の集住地というイメージからボランティア性の高い事をしているのかな?と聞かれがちです。私の場合は、どちらかと言えば、高校の頃の思い出や、これまで何度かラテンアメリカにいた経験から、彼ら(保見に住む人たち)の文化は面白いし、そこで面白い仕事ができそうだ!という思いで関わっています。ボランティア性の高くない仕事をしている事に後ろめたさのような物は端からありませんが、保見団地のような様々な面で切迫していると思われている場所でも、自分の興味を追い求めて仕事をする事(≒利己的)を継続することが重要であると改めて思わされました。

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